校長室の窓から
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校長の声
No.40 式辞の中の本

No.40 式辞の中の本 

 3月1日、新型コロナウィルス感染防止のために簡略化した卒業式の式辞で一冊の本に触れましたが、理由があって、あえて書名を明かしませんでした。式辞のその部分はこうでした。少し長くなりますが、お許しください。

      (略)

卒業生の皆さん、今日、お別れに当たって、皆さんに伝えたいことが一つだけあります。

それは、エンパシーという、英単語のことです。

 シンパシーという言葉は聞いたことがあるでしょう。「同情」「哀れみ」とか「同感」「共鳴」とかと訳される、あの単語です。

エンパシーは、シンパシーに似ているようで、少し違います。

私はこの言葉を、本校のある生徒が「校長先生、この本を知っていますか。面白いですよ」と薦めてくれた本で知りました。

イギリス人男性と結婚した日本人女性がイギリスの中学校に通う息子との日々を書いた本なのですが、その中に、息子が、学校の試験に「エンパシーとは何か」という問題が出たので、「自分で誰かの靴を履いてみること」って書いた、と両親に教える場面があります。

「自分で誰かの靴を履いてみる」というのは英語の定型表現で、他人の立場に立ってみるという意味だ、と説明した後で、本の著者は次のように言います。

――シンパシーはかわいそうな立場の人や問題を抱えた人、自分と似たような意見を持っている人々に対して抱く感情だから、自分で努力しなくても自然に出てくる。だが、エンパシーは違う。自分と違う理念や信念を持つ人や、別にかわいそうだとは思えない立場の人々が何を考えているのだろうと想像する力のことだ、と言うのです。

単なる「同情」「同感」ではなくて、自分と考えの違う人の、その考えを、想像して理解しよう、というのです。「誰かの靴を履いてみる」とは、そういう意味なのですね。

 初めに「地球規模の気候変動」と言いましたが、世界は今、グローバリズムの名の下での格差の拡大も地球規模で進行中です。

皆さんが自分の力で自分の生活を立てていかなければならなくなる世の中が、「誰一人取り残さない」世の中になるために、私たちはお互いに「誰かの靴を履いてみよう」と努めなければならないでしょう。エンパシーを大事にしていかなければならないでしょう。

これが、今日、校長が皆さんに伝えたかった、ただ一つのことです。

本校で学んだ皆さんは、それはまさに本校が校訓とする「誠実・高潔・奉仕」の類義語に等しいと分るはずです。

    (略)

 

2年生の萩森さんが教えてくれたこの本は、ブレイディみかこ著『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』です。私はちょうど文芸雑誌『群像』3月号に掲載のブレイディみかこさんのエッセイでもこの言葉に出会いました(下の写真が当該箇所)ので、すぐに萩森さんと第4回「図書館で校長と話そう」はこの本でやろうと決めて、図書館に3冊プラスすることにしました。臨時休校措置のため「話そう」会は来年度の楽しみになりました。

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